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永遠の詩人

永遠の詩人

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宿命生涯を貫く

萩原朔太郎

 島崎藤村氏が、獨り彼等の中での例外だつた。藤村氏の自選詩集には、過去の作品での最も秀れたもの、最も純粹で美しいものばかりが選りぬいてある。たまたま斧鉞を加へられたと思ふ個所も、決して原作の詩情を失はないばかりか、却つて原作よりも善くなつて居る。そしてこの一つの事が、他の何人にもまさつて、藤村氏が眞の本質的の詩人であり、生れたる宿命の詩人であることを證左して居る。

 つまり言へば薄田泣菫氏や蒲原有明氏やは、或る若い時代だけ詩人であり、後に年を取つてからは、本質的にそのリリシズムを喪失してしまつたのである。(そしてリリシズムを無くした時代に、その自選詩集が編纂された。)然るに島崎藤村氏だけは、今日の老年に至るまで、一貫してその魂に純のリリツクを所有して居るところの、眞の宿命的な詩人であつた。

『永遠の詩人』青空文庫
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